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議会一般質問

令和5年12月 定例会12月11日

1スポーツと文化・芸術を活かした共生のまちへ

  1. 2028年の信州やまなみ国スポ・全障スポの準備進捗など
    ア パラスポーツ拡充に向け部局を越えたプラットフォーム作りについて
    イ 「松本市スポーツ推進計画」見直しについて
  2. 教育現場における「パラリンピック教育」の有効性
    ア 市内における「パラ教育」の取り入れ状況について
    イ 心のバリアフリーを目指した「パラ教育」について 
  3. 共生社会化に向けた松本の芸術文化の在り方
    ア 松本市文化芸術推進基本計画の現状と本市の取り組みについて
    イ アートを活かした「居場所作り」について​

◎中山英子

おはようございます。

会派まつも都の中山英子です。会派を代表し、一部私見を交え、花村議員、上條一正議員とともに、一問一答方式で質問させていただきます。最初で少し緊張しておりますが、よろしくお願いいたします。

この秋は、スポーツ大会や音楽、演劇、市民祭など、文化・芸術などのイベントや講演も多彩さが戻り、松本を訪れる人も増えてきました。スポーツや芸術の分野は極限性や嗜好性を表せられると同時に、その人らしく生きるために心身を育み、様々な他者との交流を生むということにおいても大変有効なツールであることは、誰もが認めるところであります。

本市でもダイバーシティ・インクルージョンのまちを目指しておりますが、日本において51.9パーセントの人が障害者と関わったことがないというデータもあり、多くの人たちが障害に触れる機会がないという根本的な課題があります。本市も例外ではないと感じます。

そこで、4年後、2028年に控えた信州やまなみ国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会を一つの目標に、スポーツと芸術文化を最大限に生かして、本市が目指すインクルーシブな共生のまちづくりに向け積極的に取り組んでほしいと願い、スポーツ、教育、アートと3つのテーマで質問させていただきます。

最初に、スポーツの分野からお聞きします。

全国障害者スポーツ大会、以降、全障スポと呼びますが、その先を見据え、多岐にわたるパラスポーツに必要な情報を包括的に結集した組織的なプラットフォームを構築することで、パラスポーツ支援の充実や底辺の拡大が期待できると思いますが、現状と方向性について、市のお考えをお聞かせください。


◎スポーツ本部長(大島良司)

初めに、パラスポーツの支援の現状についてお答えします。

本年6月定例会で答弁しておりますとおり、今年度からスポーツ本部がリーダーシップを取りながら、関係部局と連携してパラスポーツの支援に取り組んでおります。

これまでの実績としましては、パラスポーツの普及啓発事業として、体験会や指導者の派遣、教育委員会と連携したパラスポフェスティバルを実施し、さらに、障害者団体のスポーツ施設の利用について見直しています。

パラスポーツの支援組織としましては、県や本市の関係部局のほか、公益財団法人長野県障がい者スポーツ協会、障がい者スポーツ支援センター松本、一般社団法人長野県理学療法士会などがあり、本市の各種事業にご協力をいただいております。

次に、組織的なプラットフォーム構築の方向性についてお答えをします。

基本的には、スポーツ本部が主体的な役割を担ってまいります。しかしながら、議員ご指摘のように、パラスポーツに関する支援、情報は多岐にわたるため、県の関係機関や障害者スポーツ団体とも連携して、今後もパラスポーツに関する支援の充実を図っていきたいと考えてます。

加えまして、必要に応じて、パラスポーツのプラットフォームとなり得る包括的な組織の構築につきましても検討していきたいと考えております。


◎中山英子

10月に鹿児島で行われた全障スポへ本市から出場する6人の選手が市長表敬した折、障がい福祉課とスポーツ本部の方々に出迎えていただきました。本市として、全障スポの表敬の受入れは初めてだったとのことで、集まった選手や保護者の方々に大会後にお話を伺いましたが、「表敬がとても励みになり、結果にもつながった」と話しておられました。

ご本人の励みになると同時に、障害を持つ方が活動・活躍を公に伝えることには大変意義があると感じました。今回、部局を超え機会をつくってくださったことに感謝を述べると同時に、今後も積極的に機会を増やしていただきたいと思います。

全障スポに出場する機会を得る障害者の方々は、子供の頃から養護学校等でスポーツをした方が多いようです。成人後に障害を持った方や脳障害など病気を患った方は、スポーツに出会える機会が少ないと聞いております。明日は我が身であるとも思います。

本市に限らず、障害者のスポーツ環境の課題は全国的にもありますが、東京オリ・パラを機にパラスポーツという言葉が根づき始め、地域課題をパラスポーツで変えようという機運が高まりました。国の共生社会ホストタウン事業の立ち上がりに伴い、海外の競技団体を受け入れて、交流事業を行った自治体も多くありました。

私も前職で、政令指定都市を含む7自治体と共生社会への機運醸成を進める仕事に従事しましたが、イベント止まりにとどまり、日常につながる仕組みに落とし込むことには至れませんでした。

調査をする中、独立行政法人日本スポーツ振興センターがオランダオリンピック委員会と連携し、スポーツで社会課題を解決することを掲げたGame Changerプロジェクトが立ち上がり、都内の3自治体が選ばれて、2017年から5年間にわたりパラスポーツで社会を変えようという機運の醸成の先まで踏み込んだプロジェクトを行った事例にたどり着きました。

オランダでは、障害者の方がスポーツをやりたいと思ったときに、その方に合ったスポーツ施設や団体を紹介する相談窓口、スポーツサービスポイントというものがあるそうです。オランダと交流をする中で、共生社会化に向けた日本版のスポーツサービスポイントをつくって、実装することを実現した東京都足立区に話を聞きました。

足立区では、オランダからのアドバイスに基づき、まず地域の障害者のスポーツ事情を調べた上、区内を6ブロックに分けて、関係者で地域スポーツミーティングを繰り返し行ったそうです。具体的には、各地域のスポーツ関係者、スポーツ推進委員、施設の指定管理者、総合型地域クラブスタッフ、パラアスリート、障害者施設職員、医療関係者などが集まり、障害のある方への運動・スポーツ推進を議論する会議を現状把握から始めました。

障害者施設の職員は、作業所に来る障害者の方に対しては、福祉的な面でサポートをするということしか考えていなかった、障害のある方がスポーツをするという発想は全くなかったといった感想が寄せられました。

また、スポーツ推進委員からは、障害者向けのスポーツに対して、どのように関わっていけばいいのか分からないといった声があったそうです。

パラアスリートからは、皆さんが思っている以上に障害者は結構スポーツができることもあると伝え、具体的な工夫の方法を伝えることで、参加者に新たな視点を提示したといいます。

意外なほどにそれぞれが互いの状況を知らないでいることが多いことに気づいたといいます。ミーティングを重ねて課題を抽出した結果を踏まえて足立区は、2021年にあだちスポーツコンシェルジュというスポットを生涯学習支援室のスポーツ振興課に立ち上げ、障害者がスポーツや運動を始めたいときに、どのようなスポーツをどこで参加できるかを案内したり、体験や団体加入の調整や立会いを支援するポストを配置しました。担当者は1人ですが、ミーティングの積み上げで区内の関係者がつながり、情報を共有できてもいます。

また、受皿が少ないのが課題であると言っていましたが、現在、設置から3年で92件の相談に応じています。視覚障害者の方に視覚障害者の卓球クラブを紹介したところ、活動に定着し、仲間ができたことで、肉体的な面だけでなく心の新陳代謝が上がったという前向きな声が聞かれています。

このプロジェクトの成果として、コンシェルジュのほか、足立区スポーツセンターに障害を持つ方や子供を中心に誰もが楽しめるバリアフリーの多目的スポーツレクリエーションコートができたということです。

長野県の真ん中でもある本市には主立った障害者の拠点がないため、専門指導員も育ちにくく、パラスポーツが広がりにくい面があるようです。全障スポの機会を生かし、障害を持つ方が気軽にスポーツできるハード面、ソフト面での環境の整備に対し、積極的に粘り強く研究・検討していただきたく、お願いしたいと思います。

次の質問に移らせていただきます。

松本市は、松本市スポーツ推進計画の見直しを来年度に控えております。東京オリ・パラ後にスポーツ庁の第3期スポーツ基本計画が昨年3月に見直しをされ、スポーツの価値を高めるためにスポーツを通じた共生社会に向けた3つの価値が加わりました。

その1つに、年齢や性別、障害にかかわらず、誰もがスポーツにアクセスできる環境の提供といった視点が明記されました。県の長野県第3次スポーツ推進計画にも同様の視点が追加されました。

現在、本市のスポーツ推進計画では、共生社会という視点への言及がされておりませんが、追加のお考えはありますでしょうか。


◎スポーツ本部長(大島良司)

本市のスポーツ振興の柱である松本市スポーツ推進計画ですが、平成27年に第1期計画を策定して以来、10年ぶりとなる改定の準備を進めております。

計画の策定に当たりましては、松本市スポーツ推進審議会でご協議いただくこととしておりますが、とりわけパラスポーツに関することにつきましては、様々な視点からの議論が必要であると考えています。

現在のところ、一般財団法人松本市スポーツ協会をはじめとするスポーツ関連団体や松本市校長会などの教育機関、一般社団法人松本市医師会、公益財団法人長野県障がい者スポーツ協会など様々な各界の代表に審議会へ参画いただき、さらに市民アンケートも加え、様々な視点から幅広い意見を伺う予定としております。

本市としましては、スポーツ庁が策定しました第3期スポーツ基本計画の内容を参酌しながら次期計画を策定し、多様な主体が参加できるスポーツの機会の創出やスポーツを通じた共生社会の実現に向けて、取り組んでまいります。


◎中山英子

心強い答弁をいただきました。

以下、要望となりますが、委員の方々にパラスポーツを現場で熟知した方も数人入れていただければと思っています。例えば、松本市のパラリンピアン、車椅子バスケの奥原明男さんやアルペンスキーの三澤 拓さんらパラアスリートとして実際に社会貢献されている方もぜひ委員とし、ご検討いただけるようお願いいたします。

次に、パラスポーツを活用したパラリンピック教育、通称パラ教育について質問させていただきます。

こちらも東京大会を機に首都圏を中心に全国的に盛んになりましたが、パラスポーツ体験などを通して多様性を学び、共生社会についての理解を深めるためにとても有効です。

教材としては、長野県のパラウェーブNAGANOが推進するものや、公益財団法人日本財団パラスポーツサポートセンターによるパラアスリートらを講師派遣するあすチャレ!のほか、日本パラリンピック委員会が学校教育用に普及し、電子化も進めているI’mPOSSIBLEなどがあります。

現在、松本市でのこういった教材やシステムを活用した取組状況を教えてください。


◎教育監(坂口俊樹)

市内各小・中学校には人権教育主任の先生が位置づけられており、教育委員会からは、研修や会議等を通じて、人権教育に関わる情報の共有や発信を行っております。

パラリンピック教育については、令和2年度に長野県障害者スポーツ協会の方を講師に、小・中学校4校で講演と車椅子バスケットボールの体験を実施しました。実施した学校からは、体験を通して、パラスポーツに興味を持つきっかけになっただけではなく、自分の強みや持ち味を生かして生きていくことの大切さを感じた等の感想が子供たちから寄せられました。

この実績を基に、令和3年度からは、長野県がスポーツを通じて共生社会を創造することを目的とした教育プロジェクト、パラ学を実施することとなり、以来、このパラ学を通してパラリンピック教育を実施してきました。令和3年度は3校、令和4年度は私立学校を含む3校、令和5年度はこれまでに3校が実施し、今後、1校で実施を予定しております。

今年度、総合的な学習の時間でパラスポーツを体験した中学生からは、障害があることを一つの個性として捉える生徒の姿や、学校にいづらいと感じる生徒が他者と交流し、笑顔を見せる姿があった、不登校の傾向のあるお子さんが体験を楽しみに登校したり、体験のためにふだんより長く学校で過ごせたりした等の声が寄せられています。

これらのことからパラリンピック教育は、パラリンピックについて知ることにとどまらず、多様性を尊重する柔らかな学校づくりや共生社会の実現につながるものと考えております。

以上です。


◎中山英子

最近、私が見学した市内の小学校の事例を紹介します。

山辺小3年生の1クラスで実施していましたが、テーマの自由度が高い総合の学習で1年間福祉学習に取り組む中で、県のパラウェーブNAGANOによるパラ学のアスリートの出前授業を4こま取り入れたクラスとなります。

パラ教育を取り入れたきっかけを聞くと、ちょうど年長のときにコロナ禍となり、大事な低学年の時期をマスク生活で過ごしたことが影響して、表情も乏しく、コミュニケーション能力がない印象だったと先生は言っていました。話す前に手が出てしまう子もいたということです。先生は、相手の立場に立つコミュニケーションの大切さを学んでほしいと強く思って、実体験が伴うパラ教育を選んだといいます。

11月と12月の2回、車椅子のパラリンピアンによる車椅子ポートボールとブラインドサッカーを、松本山雅BFCの全盲の選手から指導を受けました。車椅子の場合、動きが不自由だと、パスを出す際の動き方、声のかけ方を工夫しないとなりません。また、アイマスクをしている場合は、あっち、こっちと言っても分からないので、より具体的に相手に伝えてプレーする体験を、子供たちはしました。

実技の後は、パラアスリートたちから、分かりやすく自分の体験を通して、人を思いやる大切さなどを聞きます。パラリンピアンの講師からは、パラリンピックの試合の映像や大会で獲得した銀メダルを触らせてもらい、子供たちは目を輝かせておりました。パラアスリートの実体験を生で聞き、子供たちは大きなインパクトを受けたようでした。

また、車椅子の講師がユニバーサルトイレに入った際に、スリッパを間口に置かない配慮をされていたことに感動し、ほんの少しの配慮がとてもうれしかったと話すと、担任の先生からは、授業の前には、実際に車椅子が来たときに不便がないのかと学校内を回って点検したり、事前学習を行ったということでした。

1年かける福祉教育の中で、暮らしやすい松本ってどんなだろうということのイメージを言葉にさせたりしているようですが、暮らしやすさの子供がイメージする中身が少しずつ変わってきているそうです。ユニバーサルデザインの意味を学ぶほか、人間関係の基本であるコミュニケーションの大切さも早く身につけられることを実感していました。

子供たちの表情も豊かになり、効果の高さを先生は強調しておりました。松本市の場合、パラ教育については、学校の回覧として回ってくるけれども、アンテナを高く保たないと目に留まらないのでもったいないといったこともおっしゃっていました。

そこで、次の質問に移らせていただきます。

インクルーシブ教育に力を入れ、発達障害児への支援などの拡充を図る本市にとって、さらなる促進のために、障害を持つ子供の支援とともに健常者側の意識を変えていく心のバリアフリーを構築することが肝要と考えます。

パラ教育を普通学級で取り入れることは非常に有効であると考えますが、本市の推進、活用の方向性を教えてください。


◎教育長(伊佐治裕子)

ただいま、議員からはとてもうれしい報告をいただいて、心が温かくなりました。

先ほど、教育監もお答えしましたけれども、パラリンピック教育は、パラリンピックそのものを学ぶことに加えて、パラリンピックの理念や目的に触れることで、障害のあるなしを含めた多様性とは何か、また多様な人々が共に生きる共生社会を実現するにはどうしたらいいのか、このことを考えるものであり、教育現場で実践していくことは大変意義深いものと考えています。そして、このことは、松本市が定める松本市子どもの権利に関する条例で大切にしている一人ひとりの違いを「自分らしさ」として認められる「すべての子どもにやさしいまち」の実現につながるものです。そしてこれは、全ての人に優しいまちにつながります。

現在、教育現場では様々な課題があるわけですが、今学校に求められているのは、不登校児童生徒への支援に代表されるように、子供も教職員も互いの人権を尊重し、多様性が認められる柔らかな環境をつくっていくことだと考えています。

パラスポーツを体験し、多様性についての知識・理解を深めると同時に、人権感覚を高めるパラリンピック教育に取り組むことは、子どもの権利条例の理念の実現や今求められている学校像の実現、このことにもつながるものです。そして、議員からもご指摘がありましたが、バリア、障壁を感じている人の身になって考え、行動を起こす心のバリアフリーにもつながると考えられます。

先ほど教育監が紹介しましたように、パラリンピック教育を実践した学校からは、人権教育上の効果や今後の実施について前向きな声がたくさんありますので、各校の指導計画に沿ってパラリンピック教育をさらに推進していけるように、教育委員会としても取り組んでまいります。

以上です。


◎中山英子

県内のパラ教育の先進事例である長野市の事例を紹介させていただきます。

長野市は、平成30年度から教育プログラムに認定し、講師派遣の費用を補助できるよう事業化し、長野市校長会などで各学校に推奨しております。令和3年度は、小学校54校中30校、中学校25校中17校で実施し、大変好評で定着しているということです。特別支援学級と普通学級を行き来する子で不登校ぎみの子がこの授業だけには出てくるといった事例もあるそうです。

パラスポーツは、生徒の体力差に関係なくみんなが公平に楽しめるルールを考えたりつくっていけるのも特徴だと思います。子供への印象も強いようで、家庭へ帰って、親に伝えるリバース教育の効果も高いと聞いております。

課題として、体験学習による出前授業などは講師の出張費用がかかるケースもあり、先生がやりたくても費用が捻出できずに断念するケースも幾つか聞いております。

幼い頃に違いのある子の状況を想像し、思いやる心を五感を使いながら学べるのは意義が深いと思いますので、本市でもパラ教育を推奨するとともに、よりリアルに学べる機会を増やせるよう、事業化もぜひ検討いただければと思います。

余談ではありますが、このところ、社会人のチームビルディングとしてのパラスポーツ活用も増えており、私も先月、上條美智子議員とともにJCが主宰した松本山雅FCのブラインドサッカーチームの監督によるアイマスクをしてサッカーすることを初めて体験しました。見えない状況で方向を定めてボールを蹴ること、周囲の雑音の中で音を聞き分け、ボールをキャッチすること、アイマスクの人に状況を伝えること、全て難しく、リアルな体験の意義を感じました。

教育は終わりにさせていただきます。

次に、芸術文化をテーマに質問します。

松本市文化芸術推進基本計画では、年齢、性別、障害の有無にかかわらず、互いを尊重できる社会を目指すという施策別目標を掲げておりますが、現在の具体的な取組の内容と、今後さらに多様性を認め合う社会づくりを広げていくことについて、本市の見解をお聞かせください。


◎文化観光部長(小口一夫)

松本市文化芸術推進基本計画は、文化芸術基本法に基づき、本市の文化芸術に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、令和3年度に策定したものでございます。

計画では、議員ご指摘の施策別目標に対し、障害者等と市民が協働する文化芸術の発表機会の提供という具体的な施策を掲げております。

この具体的な取組としましては、今年11月3日に開催した松本市文化芸術表彰式典で、主に知的障害者の方で編成され、20年以上にわたり音楽活動を続けてこられた楽団ケ・セラを文化芸術功労賞に表彰し、感動的な演奏をステージで発表していただきました。音楽を通して社会的自立を目指す姿をより多くの人に見ていただく機会となったというふうに捉えております。

今後も、年齢、性別、障害の有無にかかわらず、誰もが文化芸術に親しむことができる場の創出に努めていくとともに、今年3月に定められました国の第2期文化芸術推進基本計画や、第2次となります長野県文化芸術振興計画の内容を踏まえ、多様性を尊重し、他者への理解や寛容性が促進されるよう、本市の文化芸術推進基本計画につきましても見直しを検討してまいります。

以上でございます。


◎中山英子

本市は芸術文化、またアートについては際立った特徴があるまちです。私が言うまでもありませんが、改めて芸術文化の役割である障害や生きづらさを抱えた人々も含む多様ですばらしい表現活動の後押しの重要性について、推進計画もアップデートしていただき、共生社会へのさらなる具体的施策につなげていただきたいと思います。

最後の質問に移ります。

障害や生きづらさをテーマとしたアート作品をまちなかに展示するイベント、対話アートNAGANO WEEK 2023が10月からまちなかで開催されています。ナナイロ会議実行委員会が昨年から行っている活動で、障がい福祉課に名義後援をいただいたそうですが、まだまだ浸透には至っていないと感じます。

アートを活用して共生社会を目指すこの取組は、松本市の芸術文化施策の方向性に合致しているため、本市が協力することでより多くの人に理解され、活動が広がっていくと考えますが、市のご見解をお聞かせください。


◎文化観光部長(小口一夫)

議員ご紹介の対話アートNAGANO WEEKは、アートを通して、障害の有無にかかわらずバリアフリーな関係で交流ができるすばらしいイベントであると認識をしております。アートの力で人と人とがつながることを目指している松本市の文化芸術施策の方向性にも合った取組であり、この芸術作品をより多くの方々に向け発信することで、お互いの価値を認め合い、尊重し合うことにつながるものと考えます。

松本市が進めます松本まちなかアートプロジェクトは、まちなかで行われる様々なアート活動を一つのプラットフォームを通して多くの人々に発信し、日常生活の中で文化芸術に触れる機会を増やしていくことを目的としております。

対話アートNAGANO WEEKも中心市街地で展開されたアートイベントでもあるため、次回開催の折には、松本まちなかアートプロジェクトのホームページやSNS等によりまして、情報発信などの支援を検討してまいりたいと考えております。

市民の誰もが文化芸術を楽しむ楽都・まつもとであるためには、多様性を認め合い、アート制作や鑑賞において、バリアフリーなアクセスであること、また、障害の有無に関係なく、アーティストの才能を促進するインクルーシブなコミュニティーであることが重要であると考えます。アートの力を信じ、誰もが心豊かに暮らす共生社会の実現に向け、より一層取り組んでまいりたいと考えます。


◎中山英子

前向きな答弁をいただきました。

この取組は、情報発信の面で課題を抱えており、今後、松本まちなかアートプロジェクトとして支援いただくことは、関係者も望んでおります。今後の展開を楽しみにしたいと思います。

対話アートを少し紹介します。

11月中には、中央図書館、中央公民館ほか、イオンモール松本や駅の自由通路など中心市街地9か所で障害をテーマとしたアートや障害者の方の作品などを展示していました。現在も、美術大学の入試の予備校で今町にあるマツモトアートセンターの1階で10月から5か月間、「ジャンクション」展と題し、企画展を行っています。今は市内の福祉作業所も参加し、障害や生きづらさを抱えた人たちのアートグループなどの作品展をやっています。人間らしさの詰まった力強い作品が並んでおりますので、ぜひ機会を見つけて足を運んでいただきたいと思います。

また、デジタルアートにも力を入れようと、e-スポーツとコラボした新たな場とアートづくりの試みを、今度の日曜日17日にまつもと市民芸術館で行うそうです。対話アートのコンセプトは、「マイノリティー・エンパワーメント」ということです。パンフレットにあった文章がとても印象的だったので、読ませていただきます。

「常に社会を変えてきたものは、マイノリティーから生まれてきました。社会の中心にマイノリティーが存在し、地域にその声が届くようにすることは、私たちの地域社会の豊かさにつながると考えています」と、このパンフレットなんですが、書いてあります。

主催者の中山さんという、私、親戚ではないんですけれども、主催者の中山さんは、ご自身のお子さんが障害を抱える中、生きづらさを抱える人の新たな場づくりをしたいとナナイロ会議といったものを始め、アートの力にご本人もエンパワーされたそうです。

障害者のみならず、生きづらさを感じる全ての人がフラットに生きられる世の中を目指すとともに、障害者アートの壁をこの活動の中で取り除き、フラットなアートのジャンルとして認知されるような取組を目指しており、松本独自のアートカルチャーをつくりたいという夢を語っています。まちなかを共有空間とし、商店街とのコラボなどでさらに作品の展示を増やし、アートとしての価値を高めながら、障害ある人が社会に貢献できる形を後押しできるのではないかというふうに考えています。

民間からこのようなうねりが出てくるのは、まさに松本らしさだと思います。対話アートの取組は現在、クラウドファンディングや県の地域発元気づくり支援金などを活用して行っているそうですが、本市も資金面も含めた投資をぜひご検討いただければと思います。

草間彌生さんを生んだ松本市は、まち全体で新たなアートの在り方をつくる潜在能力を秘めているはずです。草間さんはニューヨークへ行き、自分の居場所を見つけて花開いたわけですが、そもそも、松本がニューヨークのような多様な個性を「あなたはそうなんだね」と違いを認めていける地域になっていればいいなと常々思っています。

2028年の国スポ、全障スポは、そういった地域に向けて取り組む一つの指標になるのではないかと思っています。ちなみに、県の試算では、国スポ、全障スポの期間中に全国から松本に来る人の数が17万人に上ると言われています。スポーツと芸術文化を活用し、心のバリアフリーを進め、全国から集まる人々をエッジの立ったまちなかアートで迎えたらいかがでしょうか。住む人も訪れる人もワクワクして、ずっと身を置きたくなるようなまちを目指すことを提案し、私の質問を終結させていただきます。

ありがとうございました。