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議会一般質問

令和5年9月 定例会 9月12日

1「ガク都」松本の魅力を活かした観光戦略

  1. 白馬村、長野市と本市で結んだ「連携協定」の進捗について
  2. 本市の冬の観光と、今年度の光と氷の城下町フェスティバルについて
  3. 松本市観光ビジョンの見直しと、松本観光コンベンション協会のあり方について

◎中山英子

会派まつも都の中山英子です。会派を代表しまして、横内議員、花村議員、上條一正議員、神津議員とともに、一問一答形式で質問させていただきます。

5月に新型コロナウイルスが5類に移行し、コロナ前の賑わいが本格的に戻ってきました。円安も影響し、海外からの観光客が増え、本市の夏も諸外国からの来訪者が後を絶たず、観光地、また中心市街地でも、多くのインバウンド客を目にします。経済が動き出したことが実感できる夏に希望を感じながら、10年、20年先を見据えた松本市をどう描くのか、市議会議員となり、様々な人と出会いながら深く考えさせられた夏となりました。人が行き交い、コミュニケーションを積むことでエネルギーが生み出され、まちは生き生きするということを改めて実感しました。

上高地、乗鞍、美ケ原をはじめとした豊かな自然、そして松本城などの文化財、芸術や音楽、温泉など、ほかの地方都市がうらやむコンテンツにあふれた松本市は、これらをもっと生かし合う工夫で、関係人口や交流人口を増やせます。経済を大きく動かす観光を一大ビジネスと認識して取り組むことは、課題である中心市街地の空洞化や、広域的な活性化に向けた解決策につながるとも感じ、さらに重点的に取り組んでいく必要があると思うに至っています。

このような観点から、本市の観光によるオールシーズンの賑わいと豊かさの創出を願って、質問させていただきます。

今年3月の末、本市と白馬村、長野市とで、インバウンド客の受入れ拡大と長期滞在に向けて締結した連携協定について質問いたします。

白馬との観光連携は、昨年12月の一般質問で上條敦重議員が詳細に質問されておりましたが、冬の白馬のオーバーツーリズムを起点に、白馬から提案を受けた形で始まり、冬の観光を課題とする松本市にとっては、とても魅力的な話だったと思います。この協定の締結後、どのような話合いをされてきたか教えてください。また、現在の進捗についてお聞かせください。


◎文化観光部長(小口一夫)

議員ご紹介のとおり、本年3月に白馬村、長野市との間で、インバウンドを柱とする長期滞在型観光振興を目的とする連携協定を締結をいたしました。このとき、私は観光プロモーション課長としてこの提携を進めていたわけですが、このときもこういった事業を想定していると、いろんな事業を想定しながら協定を進めております。

そして、4月には具体的な事業を進めるため、3市村の観光関係課による担当者会議を発足し、内容によっては各市村の観光協会等を交えながら、月1回程度の会議を重ねてまいっております。

この会議では、連携して事業を行っていくための方策として、情報発信の時期、またその手法、イベント開催の可能性、さらには人の移動にとって重要であります二次交通、この課題の解決策などについて、バス事業者を含めた実施に向けた議論を進めているところでございます。

以上でございます。


◎中山英子

行政間での動きはスタートしたということ、二次交通手段に関するお話に至っているということで理解しました。

白馬村観光局によると、コロナ前の2019年は、延べ37万人を超えるインバウンド客が冬場に訪れ、今年の冬はこれを上回る来客数を予測しており、2月まで宿泊施設は満室とのことです。

欧米人やオーストラリア人は特に、宿泊施設で夕食を取らず外食することを好み、夜7時頃から深夜帯まで飲食店が混雑する。働く側も人手不足のため、長期滞在中の1日でも、夜、松本に食事に行くことは助けにもなるので進んでPRしたいという、まさに待ったなしの状況です。

ここで、皆さんに想像していただきたいと思います。

インバウンド客の平均は5泊で、延べ約40万人を見込まれる中、多く見積もりますが、もし全員が松本に足を運び、1人が2万円使ったとすると、約16億円の経済効果が生まれます。オーストラリア人や欧米人だと、7泊から10泊する人が多いそうです。

白馬との連携スタートを今期逃す手はないと思いますし、ここから次のビジネスが生まれる可能性が広がります。

今期、具体的に仕掛けを始めていただきたく、その観点から次の質問に移りたいと思います。

市の事業で、冬の観光の目玉としている今年度で3回目となる光と氷の城下町フェスティバルについて質問いたします。

初年度の来場者数は約11万7,000人、昨年度は約8万8,000人と減少する中、コロナ禍も落ち着いた今年度は重要な年と捉えて臨んでいると思います。

今年度の目標入場者数を教えてください。また、目標値に対する施策、プロモーションの具体策をお聞かせください。


◎文化観光部長(小口一夫)

松本城イルミネーションは、松本市の観光閑散期である冬期の誘客促進を図るため、城下町松本フェスタ組織委員会の事業として、令和3年度から実施をしております。

今年度は、実施期間や過去2年間の実績も踏まえまして、10万人を超えることを目標に据えております。

より多くの方にご来場をいただき、楽しんでいただけるよう、今年度の演出は、鮮やかな色彩で立体的な映像表現ができるプロジェクションマッピングに変更するとともに、松本城公園内でのライトアップなども行う予定でございます。

目標達成のためには、積極的なプロモーションが重要であると考えます。情報発信は、10月中旬頃からを予定しております。専用ホームページの作成、ポスター制作、メディア向けのプレスリリースやSNS広告などの活用を含め、現在、各事業者と調整を進めていますが、さらには、まちなかの賑わいの創出のため、街頭フラッグの掲出や店舗向けの卓上ポップ、また、下げビラなどを配布することを予定をしております。

以上でございます。


◎中山英子

次に、開催時期と観客のターゲットはどのように考えているでしょうか。また、インバウンド客に向けたプロモーションはどのようにされていますでしょうか。


◎文化観光部長(小口一夫)

過去2年間の松本城イルミネーションは、12月1日から2月28日までの3か月間実施をいたしました。今年度は、12月中旬のクリスマスシーズンから2月中旬のバレンタインデー、また春節までの約2か月間としております。

今年度の国内誘客プロモーションとして、京王線新宿駅及び名古屋駅における交通広告による冬の観光誘客を実施することとしておりますので、松本城のイルミネーションを広告としまして、首都圏や中京圏から、年齢や性別、国籍を問わず、幅広い方に訴求をしていきたいと考えております。

その上で、特にターゲット層は20代から40代の方に設定をしておりますが、首都圏、中京圏、また隣接圏を対象にしたSNS広告を活用したいと考えております。

また、インバウンド向けのプロモーションとしましては、タビナカでの外国人を対象とした英語によるSNS広告を発信をいたします。さらに、次年度以降のインバウンド誘客にもつながるよう、SNS映えする映像等を活用しながら、プロモーションに取り組んでまいりたいと考えております。

以上でございます。


◎中山英子

今回、取材を進める中、松本ホテル旅館協同組合前組合長の小林さんとお話しした際、コロナ前の2019年、白馬五竜スキー場の伊藤社長からオーバーツーリズム対策として、松本の文化や食体験を紹介してほしいという提案があり、ホテル旅館協同組合と商工会議所の松本山賊焼応援団などで、松本から白馬村へプロモーションに出かけたそうです。スキー場でリフトに乗り、甲冑を着てPRをしたところ、インバウンド客に大変受け、それをきっかけに松本に遊びに来た外国人もおり、手応えをつかんだそうです。

また、中町商店街振興組合では、白馬のインバウンド客に体験型コンテンツを準備していたところ、コロナ禍に入り、途切れてしまったと聞きました。

松本市内では、コロナ前にインバウンド客の増加を予測し、ホテルが増え、客室数は2,000室から3,000室と1,000室も増え、特に冬場の経営が大変な状況が続いているそうです。

改めて、ここで白馬との件をご提案したいのですが、2か月間にわたって行う光と氷の城下町フェスティバルの期間を軸に、今期から白馬のインバウンド客とのマッチングに本腰を入れたらいかがでしょうか。

そこで、課題は二次交通となります。

まず、日帰りないしは1泊のイメージになるとは思うのですが、白馬から松本の夜に向けた冬の観光バスの運航便の往復など、今期検討できますでしょうか。


◎文化観光部長(小口一夫)

先ほど、議員からご紹介いただいたとおり、冬期の白馬村には海外から長期滞在の観光客が多く訪れております。今年の冬は令和元年度を上回る旅行者が来訪すると予想されており、人口9,000人余りの白馬村では、飲食店や宿泊施設の供給が追いつかない状況に苦慮しているということは聞いております。

そうしたインバウンドの受皿となり、日本の文化や芸術分野へのニーズに応えるために、松本市と長野市が連携して、ウィン・ウィンの関係を築くことが重要であると認識をしております。

具体的には、インバウンド向けの白馬村で発行しておりますフリーペーパーや、白馬村内の観光案内所での情報発信などにより、光と氷の城下町フェスティバルをはじめ、市内の文化観光施設を紹介し、誘客につなげていきたいと考えております。

議員ご提案の夜を含めた白馬直行バスにつきましてですが、欧米豪の皆様に最近よく受けているのは、居酒屋文化を体験したいということだそうでございます。連携協定を推進する上で、重要度の高い方策の一つであると考えます。そのため、バス事業者とインバウンドファーストの直行バス、この実現に向けて具体的な調整を進めていきたいと考えております。

以上でございます。


◎中山英子

今期から具体的に直行バスを調整していくという前向きなお答えをいただきました。ぜひ、準備を具体的に進めていただければと思います。

仕掛け人である株式会社五竜の社長で、現在、一般社団法人白馬村観光局代表理事である伊藤さんは、海外での様々な経験があり、経営感覚も優れ、広域的な視野でものを見ている方と、お話ししていて感じましたが、松本城のイルミネーション企画は必ず受けると言っています。松本のカフェ文化やバー文化、部長がおっしゃったような居酒屋など魅力的なコンテンツを、海外のインフルエンサーから発信する具体策や、また、アジアについてのアイデアもお話ししていました。ある業者は、白馬から野沢温泉の火祭りへ、一晩で7台もの観光バスを出している実績があると聞きました。

いずれにしても、今期、交通手段が担保されれば、春には来期に向けた海外へのプロモーションも視野に入れられると、伊藤さんもおっしゃっています。目標設定を明確化し、白馬村と協力しながら官民一体となって、今期から光と氷の城下町フェスティバルを活用した集客を集中的に取り組んでいただきたいと思います。

さらに、JR大糸線のダイヤも、現在、松本から信濃大町までは夜も列車が走っていますが、白馬まで伸ばすことも視野に入れることも検討していくくらいの夢を描いてほしいと思います。JRとバスが競合しないくらいの多くの観光客を呼ぶイメージで進めていただき、ひいては、大糸線の課題の解決にもつなげていけたら、松本の観光にも将来的に役立つと考えますので、ぜひ来期以降、JRもご検討いただければと思います。

次に、松本市の観光ビジョン見直しと、一般社団法人松本観光コンベンション協会の在り方について質問します。

経済文教委員協議会での説明を受けましたが、松本市観光ビジョン見直しがなぜ必要だったのか、その背景と進捗状況を教えてください。


◎文化観光部長(小口一夫)

松本市観光ビジョンは平成18年に初めて策定し、5年ごとに見直しを行ってまいりました。直近のビジョンは平成30年4月に策定され、5年を経過することから、近年の観光に対する価値観やニーズの変化を踏まえて、市全体の観光が目指すべき姿を改めて再設定するため、今年度見直しを行っております。

地域の消費を上げるため、3つの方向性を挙げております。

1つ目は、観光資源の魅力を価値に転換する施策の立案。2つ目に、実行可能な具体的なアクションプランの設定。そして3つ目として、検証可能なKPIの設定としております。

今年度は、公募型プロポーザルにより選定した事業者に業務を委託し、これまでに観光データや総合計画など、関係する既存の計画の現状分析を行い、この分析を基に、若手職員、女性職員による庁内ワークショップを開催をし、また、地域観光事業者によるワークショップも3回実施しております。

今後は、外部有識者と地域オブザーバーに、松本観光コンベンション協会あり方検討会議のメンバーから2名を加え、3回の検討会議や庁内検討会議、議会説明、パブリックコメントなどの実施を経て、来年、令和6年3月末の策定を予定をしております。

以上でございます。


◎中山英子

先週、観光ビジョンの見直しに向けた3回目のワークショップを拝見しました。事業者の方々が集まり、今年公募で選ばれた株式会社リクルートがファシリテートしたワークショップは、松本の特徴やイメージを言語化したりビジョンを共有したり、横のつながりを持つという意味から、定期的に開くことは意義があるものと感じました。

最後になりますが、松本観光コンベンション協会あり方検討会議も実施されていると思いますが、どのように観光ビジョンに反映させるのか教えてください。


◎文化観光部長(小口一夫)

松本観光コンベンション協会あり方検討会議の結果の中では、観光ビジョンの策定に関して2点が示されております。

一つは、観光ビジョン策定に観光コンベンション協会が参画し、ビジョンを共有すること。もう一つは、ビジョンで定める役割分担に基づく独自の戦略を立てて事業を展開することでございます。

現在、ビジョン策定に向けて営みを行っている中、目指すべき姿の柱の一つとして、市と観光コンベンション協会との役割分担を明確にします。その上でまずは、観光コンベンション協会への市の委託事業の見直しを図るとともに、官民連携組織としての強みを最大限生かし、民の論理で地域が稼ぐための事業を積極的に展開できるよう、組織体制の強化を市としても支援を進めていくということを検討していきたいと思っております。

松本市が国内外から選ばれるデスティネーション、観光地であり続けるため、市民、事業者、行政が一体となり、文化、伝統、自然を未来につなげる持続可能な観光地を目指すために、実効性のある観光ビジョンの策定を着実に進めます。

以上でございます。


◎中山英子

仕組みをつくっていく過程での役割分担と流れ、官民の連携について理解できました。

最後に、観光に関する組織づくりをするに当たって、要望と所感をお伝えいたします。

まず1つ目、先ほど小口部長より、組織体制の強化支援を行政が担うとご答弁いただきましたが、どういった強化をするのか、支援内容を明確にすることをお願いしたいと思います。

2つ目に、松本の観光をプロデュースしコーディネートできる最適な人材を確保していくことが必須だと感じました。

松本市は、姉妹都市である高山市のように、観光を一大産業として目標を掲げていけるはずだと、今回多くの方とお話しする中でも改めて思ったことですが、コンテンツに恵まれながらも一歩が踏み出し切れていない理由を考えたとき、マーケティングに精通した今の時代に合った松本の観光の全体像を描き、仕切れる人が不在だからだというふうに思いました。マーケティングができる人材というのは、地元、国内、海外も含め、世界を俯瞰してアンテナを張り巡らし、客観的な数値に基づいて総合的に分析をして企画を立て、動いていけるヘッドとなれる人材、いわゆるプロデュースやコーディネートをできる人だと思います。

現在、コンベンションに関わるメンバーは、地元の事業者の方が中心となっています。この方々は、ご自身のなりわいを営むことに集中せざるを得ない状況かと思います。広い視点を持って客観的にプランニングすることに特化した人材をどこかに入れていかないと、なかなか前に進みにくいのではというふうに思います。

まず、今年の冬の光と氷の城下町フェスティバルで白馬とつなぎ、まちなかから冬の活性を盛り上げてほしいと思います。2月中旬にフェスティバルが終わるということですが、もしできるのであれば、草間彌生さんの展覧会に1日3,000人が美術館に訪れたという実績から、ナイトミュージアムをやり、回遊ルートを広げるということもありかもしれないと思います。

そして、来期以降は、市街地の夜のみならず、浅間温泉の宿、乗鞍のスキーエリアへの広がりなど、今後様々な場所につなぐ流れを、まず白馬とパートナーシップを強化してつくっていく。そして、今期の試みを活用し、空港の発着路線の地域とも連携するなど、様々な意味で松本の一大ビジネスとなる観光ビジョンを描いていくことを大きく期待します。

以上です。ご清聴ありがとうございました。